光:
古くからヨーロッパでは、金は「太陽」と関わりのある物質とされ、太陽エネルギーを伝導するとされた。従って「太陽」のイメージが強く、「地中の太陽」と呼ばれている。たとえばキリスト教以前ローマで信仰された「ミスラ神」の「光輪」は、7つの放射線の光を持ち、まるで太陽そのものであるように見えるが、その「光輪」は正に「太陽の光」を具現したものなのである。メソポタミア文明の時代から、神々の図像には「光輪」が描かれていた。キリスト教のイエスや天使も、頭部に「光輪」を頂いている。畏怖されつつも人々に恩恵を与え続ける「太陽」、それと同じ絶対的なパワーを神が持つことを、金を使って表現したのが「光輪」なのである。そしてそこからまた、天上と地上の「王位」・「王権」・「王者」の象徴が生まれて来る。「聖書」の中でベツレヘムの星に導かれた東方の三賢者が、キリストが生まれた時「王と認める証」に「金」を捧げたことは、この象徴を代表している。
豊かさ:
上記の「太陽」と関連して、麦作の文化では、太陽の恵みであり毎日の糧のパンの原料となる「麦穂」の金色は、豊かな実り、つまり「豊穣」の象徴である。その表れとして、ギリシャの太陽神アポロン(男性)もローマの豊穣神ケレース(女性)も、黄金の髪を持つとされている。またゲルマン神話では、美と豊穣の女神フレイヤは黄金の擬人化、または黄金の力が女性の姿を取った存在とされている。フレイヤが行方不明になった夫を探して世界中を旅するうちに、流した赤い涙が地面に浸み込み、金になったのだと言われている。
このように「金」の表す「豊かさ」は、人間の生活における金銭的な豊かさに留まらず、精神的な豊かさ、更には農作物の収穫の豊かさへと発展し、そのパワーの及ぼす範囲の広さを物語っている。
